テロの社会学

2018/01/30

佐伯啓思×大沢真幸、新書館。9.11以降の社会を考察した対談集。対談集、という時点で僕の顔は暗くなった。図書館の棚にあったのでとりあえず手に取ったわけですが。対談というと、たとえば対談相手の本も読んでいなくて、相手の話を聞かなくて、凝り固まった自分の思想を主張するだけか、相手の提灯持ちをしあうというのが多いのだ。個人的にはずれを引き続けているのかもしれないけれど。
しかしこの対談集は違う。各々の立場は「新保守右派」「ポストモダン左派」(本の中の表現をそのまま使用)と分かれながらも、互いを尊重し、行き詰った現実に関して真面目に考察を重ねあう。そこでは政治的な身ぶりは極力押さえられている。あるのは、西洋智を駆使した現状の分析と、解決案の考察と、その吟味である。
結局、お互いの立場からお互いの解決策を考慮し、一つ二つの妥協点というか、ある種の答えを導いてこの対談は終わる。対話というものは勝つためにやろうと思えば実りがないものになってしまう。こと、学術を商業の場とする学者の対談はえてしてそうなりがちである。しかし、その立場を旨く乗り越えて、9.11から日本の現状まで広く視座を取ったこの本は、なかなか希少なものだと思う。良著。